“ツマラナイ就活”を変えるため、人事部の新しいネーミングを考えてみた

来年の新卒採用戦線、真っ只中です。いや、大企業は既に収束を迎えているかもしれません。大学で教えている身としては、学生の一喜一憂がこちらにまでうつってきます。

 

しかし、やっぱり変だなあと思いました、今の就活。既に、いろんな方が新卒一括採用などに関してご意見を発信されていて、なるほどと思うことも多々あります。

 

今の採用の仕方では会社は変わらない

人事の専門家でもありませんから、失礼を承知の上で申し上げたいのは、採用にクリエイティブな観点が欠落していること。つまり、今の採用の仕方で、会社は変わるだろうか、社員の個性が生かされるだろうか、と考えるのです。

 

厚生労働、文部科学両省の調査によると、今春卒業した大学生の就職希望者は全国で39万4000人、実際に就職できたのは37万人。就職率(4月1日現在)は、前年同期比0.3ポイント上昇の93.9%でした。

 

これは、3年連続の改善で、1993年3月以来20年ぶりの高水準。内訳を見ると、男子が1.3ポイント低下の93.2%、女子が2.1ポイント上昇の94.7%。文系は0.1ポイント上昇の93.4%、理系は1.6ポイント上昇の96.2%となっています。

 

一見、新卒就職率が上向き傾向で、めでたしという数字です。

 

しかし、就職戦線は年を追うごとに均質化。みなさんも目にしたことがあると思います。真っ黒なスーツを着て、ビルからぞろぞろと出てくる就活軍団。異様な光景で、怖いなあという感想しか生まれません。

 

企業のウソと学生の憂鬱

企業の方に尋ねると、個性があり停滞をブレークスルーする学生を求めていると、みなさん口をそろえる。それなら、なぜ誰が誰だか分からないようなリクルートスーツを着た学生を良しとするのか。個性を隠して、企業の扱いやすいような学生を受け入れるのか。全く理解できません。

 

ある企業のサイトには、”服装は自由ですが、多くの学生さんはスーツを着ていらっしゃいます”と記載してある。あいまいな表現ですが、スーツを強要しているとしか思えません。それを見た学生としては、ネガティブを避けようという気持ちになってしまうのも当然です。

 

また、ある学生は最終面接で、個性を出そうと考え、自己PRを紙芝居で表現。ほかの学生は、A4シートに細かく書いたものを読んだだけ。

 

あなたなら、どちらの学生を選びますか? しかし、面接官は”紙芝居をやったのは君だけだよ”とネガな反応。これだけで、企業は枠からはみ出ない社員を求めていることが分かります。複数の20代社会人から聞いたことですが、今の企業は従順で協調性の高い人物ばかり採りたがるという印象を受けるそうです。

 

また、いくつかの高級ブランドを扱う企業の内実を小耳に挟んだ話では、選ぶ基準が「顔」。それが本当だとすれば、中身はあまり問われない。うがった見方かもしれませんが、数年すれば顔の旬も失われる。それで、結婚したらどうぞ辞めてくださいという採用の仕方なのでしょうか。

 

あくまで外から見た意見ですから、いろんな理由があってのことだと思います。

 

みなさん 忘れてない? 幸之助翁の言葉を

でも、みなさんお忘れでしょうか! 松下幸之助さんの「事業は人なり」。その一説にこういうくだりがあります。

 

“人というものは一面まことに複雑微妙というか、なかなかむずかしい面を持っているものである。人間は1人ひとりみなちがっているし、同じ人でもその心というものは刻々動いており、いわば千変万化といった様相を呈する。数学であれば一たす一は二になるが、人間の心はそうはいかない。三になったり五になったりすることもあるかわりに、ゼロになったり、マイナスになったりもする。まことに人間ほど難しいものはないということが一面に考えられるのである。

 

しかしまた見方を変えれば、そのように千変万化するところに人間というもの、人の心というものの妙味というか面白さがあるともいえよう。機械であれば、スイッチを入れれば定められた通りの働きをするが、それ以上のことはしない。

 

しかし、いかようにも変化する心を持った人間だから、やり方次第、考え方次第で、その持てる力をいくらでも引き出し、発揮させることもできる。そこに人を育て、人を生かしていく妙味があるわけである”(抜粋)

 

そうです、人はみんな違うから面白い。だから、様々な能力が発揮できる。日本のリーダーたちは、松下幸之助さんに限らず、多様な人材育成を重んじていました。江戸が典型的な例でしょう。将軍徳川吉宗はこのようなことを言っていたそうです。”江戸町民の数だけ江戸はある”と。

 

尊異論、人と違うことを尊重する考え方です。だからこそ、江戸は世界史的に見ても奇跡的に戦争のない時代を作ることができたのでしょう。

 

争いがないと人は創造力を発揮する。それで、江戸の文化が隆盛しました。絵画、浮世絵、歌舞伎、着物、俳句、そして商売も。裏返せば、クリエイティブであろうとすれば争いは少なくなる。それだけ、新しいモノを生むエネルギーになるのです。

 

人事部って何のためあるのか?

そう考えてみると、人事部の重要性がますます高まってきます。では、人事部の役割とは何でしょう? 現在のところは、管理部門。その名の通り、社員をコントロールすることを目的にしている。当然、扱いやすい人材がいいに決まっています。社則からはみ出さないように見張っている部門ですから。

 

で、その方たちが中心となって新卒採用を決めている。これでは、クリエイティブな学生ははじかれてしまいます。

 

しかし、人事部は会社の経営に関わっているという観点に立てば、企画戦略部でもあるし、クライアントサービス部でもあり、リスクマネジメント部と言うこともできる。会社のすべてを見通すホリスティックな部門である方が役割を果たしそうな気がします。

 

であれば、人事部の方たちこそ、文化、経営、自然、歴史、物理、芸能などいろんなことへの好奇心が必要なのではないでしょうか。そして日頃から、そういう思考・行動をしていれば、新卒採用にダイナミズムが出てくるはずです。

 

私も採用をしてきましたが

企業にいた頃、たくさんの面接を経験しました。クリエイティブ出身だったこともあって、楽しい面接がいいなと思い、こういう質問をしていました。

 

“あなたが座っている椅子の違う価値(使い方)をすぐに10個挙げてください”と。

 

予測もしない質問に茫然とする学生。頭を抱えるタイプが多いのですが、中には考えながらもいくつか答える学生もいます。

 

バリケード、いくつか並べてベッド、ジャケットのハンガー、踏み台、陳列台、勉強机、オブジェなどなど。たわいのない質問ですが、クリエイティブ脳はとっさに反応する能力でもある。左脳的に考えると常識にとらわれてジャンプができにくい。対応力を見ることもできます。

 

ほかにもいろいろありますが、みなさんでお考えになると面白いと思います。

 

このように、人事部はユニークな人の集まり。こういうイメージが世の中にできあがれば、日本企業は面白いことになるでしょう。そうなると、就活は自分らしさを表現する、楽しい行事に変わるかもしれません。日本は、もともとユニークで変な国。そのDNAを発揮するのは、人事部のみなさんです。頑張ってください。

日経ビジネスオンライン


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