高学歴ほど安定した職?自信あり?米労働者の心配事を探る
アメリカの調査機関【ギャラップ社】は2012年8月22日、アメリカの労働者における心配事に関する調査結果を発表した。それによると正規労働者・パートタイム労働者から成る調査母体においては、「給与カット」や「解雇」以上に「福利厚生カット」が、将来自分の身に降りかかるかもしれない心配事として挙げていることが分かった。さらに学歴別に見ると、大学卒業者は非卒業者と比べて各心配事の点で楽観視する向きが強いことも判明している。特に解雇に関しては、大卒・非大卒間で約2倍もの懸念度合いの差が確認できる。
今調査の最新版は2012年8月9日から12日にかけてアメリカ合衆国内に住む18歳以上の男女に対して電話による音声通話で行われたもので、有効回答数は492人。正規雇用社員かパートタイム労働者を対象としている。英語以外にスペイン語も用いられ、かけた先の電話の種類は固定電話・携帯電話で6対4の割合。2011年3月の国勢調査に基づいたウェイトバックがかけられている。
先に別記事で伝えているが、今調査では「自分の働き先で将来何が起きるかもしれないか(ネガティブな事象、つまり心配事)」を「福利厚生のカット」「給与カット」「解雇」「時短(労働時間の短縮)」「会社の海外移転」の5項目挙げ、それぞれ近い将来自分の身にふりかかるかもしれないか否かを答えてもらっている。最上位の心配事としては「福利厚生のカット」がついた。企業側としてはもっとも削りやすい経費で、従業員側も妥協しやすいものだからと考えられる。
これについて回答者を「大卒」「非大卒(=大卒より学歴は下)」に区分し、同じようにグラフを構築したのが次の図。全項目で大卒者、つまり学歴が上の人の方が下の人と比べ、ネガティブ事象の発生リスクを低くとらえている。
リリースでは今件について事実を述べているだけで、具体的な解説は無い。しかし冒頭で触れているように、大卒者の方が「現在安定した職についており、立場が悪くなるような状況には無い人が多い」「もし社内で該当項目が適用されても、自分はその適用外となる可能性が高い」と踏んでいるのだろう。特に「時短」「解雇」の点で、非大卒者との差異が大きいあたりを見ると、その思惑が透けて見える。
一方で「給与カット」「福利厚生カット」、特に後者は会社全体で適用される可能性が高く、その時には学歴もあまり関係ないことから(例えば経費削減のため食堂を廃しても、大卒者だけ使える場を残す企業は無い)、学歴による差異はあまり見られない。
学歴で2倍近い「解雇リスク」への心配の差が生じているのは、就ける職の内容を考えると仕方ないところもある。しかし見方を変えれば、昨今では大卒者でも、2割近くが解雇の可能性について心配していることを意味する。経済の本格的な回復を果たせば、この値は半分程度に減るはずではあるのだが、それが到来する日はまだ遠いようだ。