BYODが企業にもたらす新たなワークスタイル

 モバイル、FMC(Fixed Mobile Convergence)、ユビキタス・・・ 時代によりキーワードは変われど、この10年強の間、企業ITの大きな課題の1つとされてきたのが、「いつでも場所や端末等の環境を選ばずセキュアにインターネットや社内システムへアクセスできる環境の整備」でした。

 ようやく通信インフラ(ブロードバンドやWi-Fi、Wi-Fiルータ等)が整い、社内IT資産へのアクセスもクラウドへの移行でこれまでのように閉鎖された社内LANへの社外からのアクセスと比べると比較的安価で容易になりました。更にスマートフォンの爆発的な普及に加え、2012年の年末商戦だけで3億6,200万台を販売した(*米IDC調べ)タブレットの普及が急速に高まっている中、社内ITへのアクセスセキュリティと利便性をどのように高めるかというのが大きな課題となりつつあります。

 今回は、前回のコラムでも少し触れたBYOD(Bring Your Own Device)についてお話したいと思います。

BYODの普及度

 少し古いデータですが、昨年3月に米ヴイエムウェアが発表したアジア・太平洋10カ国を対象にした調査(*VMware New Way of Work Study)では、自身のモバイル端末で仕事をすると回答した日本のユーザは22%と調査対象10カ国中でダントツ最下位でした。首位の韓国が96%、下から2番めのオーストラリアでも59%です。

 一方で、会社にBYODを許可されているのはわずか12.6%なのに対し、53.1%が個人所有端末を業務で利用したことがあるという調査結果(トレンドマイクロ調べ、2012年6月)もあるように、正式に会社から許可されている、いないに関わらず、従業員は何らか自身のケータイを業務に使っているケースがある反面、企業側の対応が後手に回っていると言えそうです。

なぜBYODなのか?

 BYODに企業が踏み切る理由としては、上記でも触れた環境面の進化に加え、以下の様な理由が考えられます。

1. 早い端末のライフサイクル

 AndoroidにしろiPhoneにしろ、半年に1度以上のサイクルで新しい端末が発売される状況では、企業側が固定資産として端末を購入、従業員へ貸与するというPCと同様の手法は、PCとは異なりリースという手段を使うことが出来ない事からも効率的ではありません。

2. ITコストの削減

 未だ余談を許さない不況下において、ノートPCに加え、Wi-Fiルータ、スマートフォン、タブレットと端末の増加や交換に伴う費用の負担は非常に大きい、というのが実情だと思います。対してBYODの場合、福利厚生費や通信費等で利用料金や端末割賦費用の一部を企業側が負担するという事になります。企業側としては固定資産を持たず費用計上でき、更に資産管理といったコスト削減につながります。

 また従業員側としても、自身のプライベート用端末を仕事にも使う事により、自身で負担する端末割賦費用や利用料金を一部会社が負担してくれるというコスト面のメリットや、端末を複数台持ち歩かなくても良い、(場合によっては)企業が最新モデルの端末を購入する際の費用負担をしてくれる、等といったメリットがあります。一方でBYODを導入するにあたってのセキュリティ対策や新たなシステム開発等といったコストは考慮すべきですが、一般的には総合的に考えればコスト削減になるケースが圧倒的だと言えます。

3. 退職リスク対策

 非正規雇用従業員や外注比率が高まり、またせっかく新卒採用しても3年以内に40%以上が辞めてしまう時代になりました。一方で携帯電話等は26カ月割賦支払で契約するケースが多く、また途中解約には1万円前後の違約金の支払が伴います。毎月、同数の採用・離職者が続くということはあり得ないため、企業資産として携帯端末等を所持する場合、どうしてもダブついた社内携帯端末在庫が発生します。一方で採用や外注等は非常にフレキシブルになりつつありますので、採用即業務開始という状況にするためには、都度社内で購入申請稟議を通し、購入・納品・設定等の手間と時間が発生するのは効率的ではありませんし、追いつかなくなりつつあります。利用ガイドラインとセキュリティ設定を行い、即業務開始できるBYODはこの点でも魅力的と言えます。

4. 従業員の利便性

 自分で使い慣れたスマートフォン1台のみで良いというのは従業員にとっても便利だと言えます。また営業職の方等はこれまでのようにすぐにバッテリー切れになる割に立ち上がるのに時間がかかってしまうノートPCを、紙ベースの様々な資料と共に重い営業カバンに入れて持ち歩かなければならなかったのが、タブレット導入によって営業ツールを駆使しながらリアルタイムの情報を、いつでもどこでもお客様へ提示できるというのは非常に便利です。またどうでもいいような書類業務のためだけに一旦オフィスへ立ち寄らなくてはならないといった無駄も省けます。

5. セキュリティ対策

 BYOD導入における一番の課題は、やはりセキュリティ対策と言えるでしょう。BYODにおけるセキュリティ対策のカギは、

・紛失や盗難に備えた端末内データの保護とリモートセキュリティ
・重要データへアクセスする際の認証対策
・アクセス先データの保護

 BYOD以前のスマホ・タブレット販売合戦フェーズでは、「企業のITマネージャーが端末をいかに管理するか」という点がセキュリティ対策としての最も熱いポイントでした。しかしBYODを導入するという事は、端末は企業の所有物ではないということになりますので、「端末紛失したらデータをリモートワイプで完全削除」等といった手段はほとんどのセキュリティツール使えません。

 しかし、最近になって、端末中の企業で予め指定したデータ領域だけをリモートでロックしたり消去したりといったBYOD向けのセキュリティツールも出てきているようですので、今後に期待大です。認証対策については、最近Dropbox等も採用し始めたGoogle Authenticator等の、ワンタイムパスワードによる2段階認証等がセキュリティ・コストの両面において有効でしょう。Webサービス等への認証対策については、LastPass等のパスワード管理アプリも非常に有効です。

 また、メール・チャット等のメッセージコミュニケーションデータや、アクセス許可するIT資産のデータについてもバックアップ等の保護対策が重要です。メールデータのバックアップ等は手前味噌で恐縮ですが、弊社のクラウドEメールバックアップサービスであるDropmyemail Businessが安価で便利です。

 BYODについていろいろと書きましたが、やはりBYODの一番大きなメリットは企業スタッフ全員がイノベーションに常に触れられるオープンで新たな事業アイデアを産み出す環境を創ること。そして、リモートワークやクラウドソーシングワーカーの活用、お客様とのより円滑なコミュニケーション等、従来型のワークスタイルを進化させる事だと思います。中小企業であればBYOD導入は比較的容易に可能ですので検討されてみてはいかがでしょうか?

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