頭のいい人ほど賢く「先延ばし」している? 研究で見えてきた先送りの効用

創造力に活を入れるには、いったんプロジェクトから離れて、意外なタイミングで訪れる「ひらめき」の瞬間がやってくるのを待つのがいい、という説があります。

それが本当であれば、やらなくてはいけないことを先送りするのもそう悪くはないのかもしれません。いっぽうで、そんなことを言いながらネットで話題になっているおもしろネコ画像ばかり見ていたら、マズいことになりそうな気もします。先延ばしに生産性を上げる効果があるのかどうか、科学の力を借りて探ってみましょう。

頭のいい人は「先延ばし」を賢く活用する

高校生を対象にしたインテル主催の科学コンテスト「Intel Science Talent Search(STS)」で入賞した特に頭のいい人を対象にして、学術誌「Creativity Research Journal」が行った調査によると、賢い人々は先延ばしのテクニックを活用し生産性を上げていることが判明しました。

例えばやるべきことをわざとやらないでおき、物事を先に進めるための刺激としてほどよいレベルのストレスをかけるといった方法です。あるいは、先延ばしを「考えを寝かせておく方法」と捉えている人もいました。答えを見つけ出す前に十分にその問題を「消化」するために、あえて決断を下すまでに時間をかけるのです。

さらにこの研究によると、STS入賞者たちは課題をいったん棚上げにした時間を用いてほかの用事をこなしているそうです。先延ばしした時間で課題以外のやらなくてはならない用事を効率よく片付けているわけです。

ずっとにらめっこしていたスプレッドシートからいったん離れて、ガス料金をオンラインで支払ったからといって必要以上に罪悪感を覚える必要はありません。

「先延ばしグセ=時間管理が不得意」ではない

では、先延ばし現象を専門に研究しているデポール大学のJoseph R. Ferrari教授の話を聞いてみましょう。同教授によると、先延ばしがちな人は時間管理が苦手と思われる傾向がありますが、そんな単純な話ではないそうです。先延ばしはその人の性格や主観的な時間感覚と大きく関わっているそうなのです。

物事を先延ばしにする人には、2つのタイプがあります。決めるまで時間がかかる人と、行動に移すまで時間がかかる人です。

Ferrari教授の研究によると、決められないタイプは他人への依存心が強く、決断を下す時に人に頼りがち。人の言いなりになりやすく、決めたことがうまく行かないと責任をほかの人に転嫁したがります。

一方、腰が重いタイプは、自己評価が低い人が多いとのこと。自分で決めるところまではできるのですが、実際の行動が伴いません。もちろん、両方のタイプに当てはまる人も多いのですが、Ferrari教授の研究成果は人が物事を先延ばしにする心理をある程度解き明かしてくれているのではないでしょうか。

生まれつきか環境か

性格の問題と思われがちな先延ばしですが、これがその人の生まれつきの性質なのか、環境によって育まれたものなのかをめぐっては、科学者の間でも意見が割れています。

Ferrari教授やオクラホマ州立大学の研究によると、ある人が物事を先延ばしにしたがるかどうかには、その人が過去・現在・未来をどう捉え、解釈しているかを示す「時間的展望」の要素が関わっているそうです。

例えば、過去に起きた悪いことにばかり目を向けがちな人は、恨み辛みを抱きがちだそうです。自分の時間的展望を改めることも可能ですが、基本的にはその人の性格に深く根ざしていると考えられています。先延ばしグセもその一部です。

いっぽう、先延ばしには育った環境も関わっている、との研究成果もあります。例えばアメリカ心理学会(APA)では、先延ばしのクセは学生時代につくケースが多いと指摘しています。例えば学校のカリキュラムに厳しさが足りず、宿題の締め切りを過ぎても特に叱られないような学習環境で育った人は、時間をムダ使いする悪い習慣がつきやすいそうです。

先延ばししがちな人は同類が嫌い

Ferrari教授のある研究では、物事を先延ばしにしたがる人たちは、同類の人に対して辛口になりがちという結果が出たそうです。

この傾向は特に女性において顕著だそう。同じ職場で働く物事を先延ばしにしがちな人のダメっぷりについて評価してもらうと、先延ばしグセがない人と比べて、自分にもその傾向がある人の方が厳しい点をつけたようです。

本当の問題は「フロー」

やることがあるのに、ネットで話題のネコ画像を次から次へとあさったり、おしゃべりしているうちに午後が終わっていた、といった体験はありませんか? ついのめりこんでしまうこの心理状態には、実は「フロー」というれっきとした名前がつけられています。

これは心理学者のMihaly Csikszentmihalyi氏が唱えた概念で、人が脇目も振らず、今やっていることに集中している状態を指します。米誌「Wired」に掲載されたインタビューで、同氏自身はこれを良い概念だといっていました。

この「フロー」と、ネットがらみでありがちな2つの行動「先延ばし」・「問題のあるネット利用」との関係については、南アフリカのウィットウォーターズランド大学のAndrew Thatcher氏らによる研究があります。この研究の目的は、オンラインで過ごす時間があまりに多くなったときに、その人の心理や社会的な関わりにどれだけの悪影響が出るかを突き止めることにありました。

学術誌「Journal of Computers in Human Behavior」に掲載された論文によると、予想通り、やるべきことを先延ばしにしがちな傾向と、問題あるネット利用には強い関連性が認められました。さらにこの研究では、仕事に関係ない行動にいそしんでいる時に「フロー」状態に入ると、結果的にネット依存に陥りやすいこともわかったのです。

この研究結果は先延ばしグセを、単なる時間のムダではなく、「意志と行動の乖離」として捉えるものです。やるべきことに取り組んでいる時に「フロー」状態に入るのは望ましいでしょう。でも、退屈な用事や、課題のプレッシャーから逃避するためにやっていることでフローに入ると、文字通りドツボにはまってしまいます。

先延ばしの傾向に気づくには

採用試験の際に、先延ばしグセのある人を前もって見分けたいと考えるなら、心理学誌「Current Psychology」に掲載されたRitu Gupta氏らによる研究が参考になるはずです。この研究によると、何らかのかたちで「ネガティブ」に運命を信じている人たち、例えば「自分の手に負えない」と考えがちな人は、神経質で心配性の傾向が強く、物事を先延ばしにしがちだということです。

いっぽうでこの研究では、先延ばしグセのある人には、人生について比較的健康的な見方をしているタイプも多いことがわかりました。過去を美化し、ノスタルジックに捉える人も、先延ばしの傾向が強いそうなのです。これはかなり意外な結果と言えます。この発見は、これまでの研究とは真逆の内容です。直感に反するようにも思われるこの結果については、科学者たちもまだきちんとした説明ができていません。

そう、科学的な検証は多々行われているものの、まだ具体的な結論は出ていないのです。しかし、一概に先延ばしが「悪い」わけではないことがわかりました。バランスをとりつつ、うまくやっていきたいものですね。

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