モチベーションは、それほど重要なのか?

昔、勤めていた会社で人事マンをしていた頃、転職してきた方から「この会社は、モチベーションの高さを大切にする人が多いようだが、仕事にモチベーションなんて必要なんですかね?」と言われたことがあります。「自分の役割ややるべき業務がしっかり分かっていて、それを全うするスキルがあれば、モチベーションなんてあろうがなかろうが、ちゃんと仕事はできるだろう。なのに、なぜモチベーションを盛んに口にする人が多いのか不思議だ」と言うのです。

 

これは私にとって、新鮮な問いかけでした。当時の会社は平均年齢が20歳代の若い集団なので知識も経験も乏しく、色々な出来事に対しての対処法やケアすべきことを誰も知らない、やってみないと分からないということが普通でした。また、組織が急激に拡大していましたから、各々の役割や仕事がどんどん変化していき、ミッションが曖昧になってしまうきらいもありました。そんな状況下で必要だったのは、情熱や前向きさであり、時には気合と根性であったことは間違いありません。その問いかけは、「モチベーションを、知識や技術の不足、組織運営の稚拙さの言い訳にしていないか?」ということだったように思います。

 

以来、私は「モチベーションが何より大切だ」という議論に対して懐疑的になりました。そもそもそれは、日本人の労働観にそぐわないようにも思えます。厚労省の調査などでも明らかなように、日本人は「勤労は美徳である」と考えてきました。高齢者の多くが「定年後も働き続けたい」という意向であるのも、経済的事情もあるとはいえ、基本的には日本的労働観の表れと見るべきです。日本人にとって勤労は美徳であり、それはすなわち、モチベーションなどと言われなくとも、前向きに、やる気を持って仕事に取り組むことができる民族だということです。

 

旧約聖書には、「禁じられた果物を食べてしまったアダムとイブが、神から罰として労働を与えられた」とあります。英語で労働を表すlaborの語源は「難儀」、同じようにフランス語で労働を表すtravail(トラバーユ)の語源は「拷問」だそうです。businessも「忙しい」が転じたものですから、そもそも欧米人にとって、労働はネガティブなものであったことが分かります。そういう民族には、モチベーションは欠かせません。嫌なことをする、避けたいことに取り組むのですから、「モチベーションが何より大切だ」となるのは実に分かりやすい話です。報酬や労働契約、労働時間に対する考え方が大きく異なるのも、このような労働観の違いに起因すると考えるのが自然でしょう。こう考えれば、労働を美徳だと考える日本人に対して、難儀だと考える欧米人向けの手法でモチベーションを高めようとするオカシサに気付くはずです。

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