高齢者の仕事事情をグラフ化してみる

内閣府は2012年6月7日、2011年版の高齢社会白書を発表した。日本の高齢化の現状や将来予想をまとめたもので、日本の社会情勢を推し量る重要な資料を多数盛り込んだ、注視すべき白書の一つである。今回はその中から【高齢者の仕事事情をグラフ化してみる(高齢社会白書(2011年版))】をベースに、日本の高齢者における就業状況・意向について見ていくことにする(【高齢社会白書(2012年版)】)。

まずは高齢者の就業・不就業状況。これは昨年の白書のデータが2007年のもので(大元のデータが総務省の【就業構造基本調査】で、これは5年おきに実施されている)、直近の2012年分はまだ調査が終わったばかり(【就業構造基本調査:2012年】)。当然結果が出ているはずもなく、今年は掲載すらされていなかった。そこで昨年分のデータの再録と、60~64歳に限定されるが【60代前半の就業率は6割強・女性の5人に1人はパートやアルバイトに】で取り上げた「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の第6回分のグラフを併記する。

定年が60歳から65歳にスライドされる過程での調査なこともあり、60~64歳においても7割以上が就業している(雇用者以外に役員や自営業者含む)。そして65歳を過ぎても男性では過半数、女性では3割近くが就業状態にある(多分に自営業者を含むことに注意)。

また、【「65を超えても働きたい?」希望者は4割強】にある通り、65歳を過ぎても就労を希望する人は多い。

実際今白書によれば、昨年の時点で定年に達した人のうち、3/4近くが継続雇用されたとの結果が出ている。「継続雇用を希望しなかった人」を除けば、「定年退職に達して継続雇用してもらうことを希望したが、果たせなかった人」は2.4%に過ぎない。

ただし労働時間は比較的短い。現時点では正社員の法定就労時間は1日8時間・1週間に40時間まで(44時間まで認められている職種もある)と定められている。それに対して65歳以上の就労者の就労時間は週34時間未満が5割超え、42時間までが7割超え。

残業をこなしている人は3割足らず。多くはそれなりに無理をせず、あるいはフルタイムでは無く契約・嘱託社員、アルバイトの形で働いているものと考えられる。

ではなぜ働き続けたいのか。これも今回の白書からは丸ごと外されてしまっているが、やはり「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」の記事【60過ぎて働く理由、トップは「今の生活費として」】からも分かるように、生活費の足しにするのが主な目的と考えられる。

「機会があれば出来るだけ長く」「仕事の内容そのものよりも、仕事から得られる便益に焦点」が高齢者の労働性向といえるが、雇用情勢は次の通りとなっている。

直近では好景気時に大幅に改善したが、2007年以降の金融危機に伴う不景気により明らかに悪化が見られる。特に失業率の大幅な上昇が目に留まる。ただし2011年に限れば、状況は多少ながらも好転しているようだ。

「高年齢者等雇用の安定等に関する法律」の改正が2006年4月から施行され、企業においては定年の引き上げや継続雇用制度の導入、定年制そのものの廃止のいずれかの選択肢を義務付けられたこともあり、今世紀に入ってからの中期的な流れで見ると、改善の方向にある。特に直近では女性の60歳代前半の就業率上昇が目に留まる。

労働市場が供給過多(つまり仕事の担い手が不足している)ならば高齢者の就業率向上も大歓迎な話となるが、現状はそうとは言い難い。直近のデータでは(【一般職業紹介状況(平成24年9月分)について】)有効求人倍率は0.81倍。これに職種や技能などを考慮すれば、さらに状況は厳しいことがうかがえる。

単に就業の「パイ」の切り方を変えるのではなく、パイ全体を大きくして多くの人に行きわたることを考えねばならないことは、以前【2010年は2.6人で1人、2060年には…?何人の働き手が高齢者を支えるのかをグラフ化してみる(高齢社会白書(2012年版))】でも解説した通り。さもなくば、本来高齢者を支える立場にある若年層の足元を、就業・経済面ですくう状況になりかねないのは言うまでも無い。

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