最近の裁判例から必須要件をピックアップ!定額残業代が有効と判断されるには

定額残業代について近年企業に厳しい判決が続いています。きちんと残業代を計算して支払うのが大変だからと安易に定額残業代を導入している企業は注意が必要です。裁判で定額残業代が有効と判断される場合あるいは無効と判断される場合、どのような点がポイントとなっているのか確認し、制度や運用の見直しをしておきましょう。

法定労働時間を超えて労働者を働かせた場合、会社は残業代を支払わなければなりません。原則は、毎月残業をした時間数に応じて残業代を計算して支払うべきですが、毎月定額で支払う方法も可能です。これを「定額残業代」「固定残業代」などと呼びます。定額残業代は大きく分けて2通りあります。1つ目は「基本給25万円には3万円の残業代を含む」などと基本給に定額残業代を組み込む方法です。もう1つは、毎月3万円を「固定残業手当」とするなど手当として支払う方法です。

定額払いにするメリットとしては、少々の残業時間のために毎月残業代計算をする負担が軽減される、残業はなるべくこの範囲内に収めるようにというメッセージになり長時間労働を抑制できる、といったことがあげられます。しかし、無制限に定額払いが認められるわけではありません。

 

◆定額残業代が認められないとどうなる?

会社が定額残業代だと主張した部分が定額残業代と認められなかった場合は、過去2年分の残業代をさかのぼって請求されるおそれがあります。裁判で負けた場合はそれと同額の付加金の支払いまで命じられることもあります。さらに、残業代は時間単価に1.25などの割増率をかけて計算しますが、家族手当や通勤手当など法律で時間単価に含めなくても良いものが決まっています。残業手当も時間単価に含める必要はありません。しかし、会社が残業代のつもりで支払っていた手当が定額残業代だと認められなかったら、その手当は時間単価に含めるよう命じられることもあるのです。その場合、残業代を計算する際の時間単価が跳ね上がることになります。これまで、きちんと残業代を支払うのが大変だから定額残業代でも払っておけばいいだろうと安易に導入していた企業は要注意です。近年、定額残業代について企業に厳しい判決が相次いでいます。

これら裁判例の中から必須要件と思われるもの、またその他の判断要素として重要なものを挙げてみましょう。

 

◆必須要件①:就業規則や労働契約書に定めているか

当然のことですが、残業代が定額で支払われるということについて、就業規則や賃金規程、あるいは労働条件通知書や労働契約書などにきちんと定められている必要があります。

 

◆必須要件②:金額を明示しているか

定額残業代には、基本給に組み込む場合と手当として支払う場合があります。いずれにしても、定額残業代がいくらなのか金額を明示しておく必要があります。たとえば、「基本給30万円には残業代を含む」というだけでは、基本給のうちいくらが残業代なのかわかりません。月30万円で何十時間でも無制限に残業させられるわけがありません。

給与明細等に「基本給のうち5万円は○時間に対する残業代とする」などと記蔵しておくべきでしょう。金額だけでなく時間数も明示しておくべきとした判決もあります。ただ、時間外と休日と深夜では割増率が異なるため、その5万円が何時間分なのかを明示しづらい面もあります。必ず求められるものではありませんが時間数も明示しておくべきでしょう。逆に「基本給30万円には40時間分の残業代を含む」というように時間数だけ明示して金額を明示しないことは認められない傾向があります。

手当として残業代を支払う場合も同様に金額の明示は必須です。たとえば「定額残業手当5万円」と明記されていればわかりやすいのですが、「営業手当5万円」など残業代とは判断できないような名称となっている場合は、実質的に見てその手当が時間外労働の対価としての性格をもっていることが必要です。営業手当5万円は残業代として支払うと定めていても、実際には営業経費の補充や営業部員に対するインセンティブの意味合いも含まれているような場合は、認められないでしょう。また、「職能手当」などその人の能力・仕事の質に焦点をあてた手当の名称は残業代とは相容れないものです。残業は仕事の質ではなく仕事の量の問題だからです。

 

◆必須要件③:公序良俗に反していないか

以上2つの要件を満たしていたとしても、それが公序良俗に反する場合は無効となります。公序良俗に反するかどうかは2つの視点で考えます。1つ目は、健康を害するほどの長時間労働となっていないかという点です。たとえば「100時間分の残業代を含む」という定めは、毎月100時間程度の残業を要求しているのと同じことです。過労死ラインといわれる月80時間を超える長時間残業を前提としていることになり、許されません。

では、何時間までなら認められるのでしょうか?過去の裁判例では、月95時間分の定額残業代を支払っていた会社に対し「このような無制限な定額残業代に関する合意は違法であるから無効とすることも考えられる」とした上で、36協定の上限として周知されている「月45時間」分の定額残業代として合意があったと認定した例があります。定額残業代に含める残業時間は45時間以内に収めた方が良いでしょう。 2つ目は、文化的な生活が営めないほどの低賃金となっていないかという点です。日本国憲法第25条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。

定額残業代を含めて基本給が多いように見えても、定額残業代の部分を除くと最低賃金を下回るような低賃金となっている場合は許されません。下回っていないとしても、最低賃金ギリギリで、しかも60時間など長時間の定額残業代を設定している場合は、実際は低賃金で長時間労働であるのに見かけ上それを隠して採用するためと考えられ、城判官の印象が非常に悪くなるでしょう。その他の判断要素

 

◆差額の精算について

定額残業代でカバーできる時間を超えて残業をした場合に、差額を支払う旨を賃金規程などに定めているかどうかという点も判断要素となります。差額の精算について規程に定めているだけでなく、実際に差額を精算していたかどうかという実態も判断要素としてチェックされます。

 

前述した3つの必須要件を満たした上で差額結算の定めがあり、実際に精算していた場合は、定額残業代はまず有効と判断されるでしょう。差額精算についての規程はないが実態としてきちんと差額緒算している場合も有効と判断される傾向があります。差額精算の規程はあるのに実際には精算がおこなわれていない場合は、精算を命じた上で有効と判断される場合もありますが、裁判官によっては無効と判断される可能性もあります。差額精算の規程がなく、実際に差額精算をしていない場合は、定額残業代は無効と判断される可能性が高いでしょう。

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